【交通事故コラム】手招きした自転車側にも過失が認められた玉突き接触事故
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信号待ちの発進時に発生した大型トラックとバイク2台、自転車が絡む玉突き接触事故において、バイクを手招きして前に出るよう促した自転車側(被害者)にも過失があるかどうかが争点となった判決(東京地方裁判所令和6年8月21日判決)を紹介します。
事案の概要
本件事故は、東京都内の片側1車線の交差点手前で発生しました。
赤信号で停止していた大型トラック(被告Y2)の左側(歩道側)に原告自転車(ロードバイク)が停車し、原告自転車の後ろには原告の妻の自転車が停車していました。
そこへ後方から大型バイク(被告Y1)と原付バイク(被告Y3)が近づいてきました。
原告は、バイク2台に対して、トラックと原告自転車の間に入ってくるように手招きをしました。
バイク2台はこれに受けて前に進み、トラックと原告自転車の間のスペースに入り込んで停車しました。
信号が青に変わり、トラックと大型バイクが発進した直後、大型バイクがわずかに右に寄ったことでトラックと接触し転倒しました。
大型バイクは後方から走行してきた原付バイクの方に倒れ込んで接触し、さらにその原付バイクが原告自転車に倒れ込むという玉突き接触事故が発生しました。
これにより自転車の運転者(原告)は負傷し、自転車も破損しました。
裁判所の判断
裁判では、原告(自転車)による「手招き」の事実があったかどうかが争われましたが、裁判所は、関係者の証言や現場の状況から、原告による手招きの事実を認定しました。
その上で、各当事者の責任について以下のように判断しました。
まず、最初に接触した大型バイク(被告Y1)については、トラックとの間隔が狭い中で無理に発進し、右に寄ったことが主たる原因として最も重い責任を認めました。
次にトラック(被告Y2)については、停車してから発進するまでの数十秒間、左サイドミラーなどで左側方や後方を一切確認していなかった点を指摘し、「本件道路形状からすればY1バイクと並走すれば接触の危険性がある中で漫然と発進、走行した過失がある」として責任を認めました。
原付バイク(被告Y3)も、「原告の手招きがあったとはいえ、前方左右に車両がいて間隔が狭い中で発進、走行するという過失があったことは否定できない。」として責任があるとされました。
そして、被害者である原告(自転車)については、次のように判断されました。
「本件事故は、狭い道路に関係車両が密集するという状況から生じた面が大きいといえるところ、原告において、そのような状況を生じさせ自らに損害が生じる事態を招いた面があることは否定し難く、原告に一切落ち度がなかったとまではいい難い。もっとも、それ自体が危険を生じさせるものとはいえない上、原告の手招きに従うかや発進のタイミングは被告Y1や被告Y3の判断によるものであることなどを踏まえると、その過失の程度は軽微である。」
結論として、以下の過失割合が認定されました。
大型バイク(被告Y1):40%
トラック(被告Y2):35%
原付バイク(被告Y3):20%
自転車(原告):5%
コメント
本件では、わざわざ狭いスペースにバイクを手招きで誘導し、車両が密集する危険な状態を自ら招いたことから、原告(自転車)にも僅かながら過失が認められています。
事故発生に直接的に関与していなくとも、事故発生の要因となる状況を作り出した場合には過失が認められる可能性があることを示しています。
「お先にどうぞ」「ここに入ってください」といった意味で行われる公道上での合図や誘導は、多くの場合は親切心でなされるものですが、相手の運転判断に影響を与え、場合によっては過失を問われることもあることに留意する必要があります。