【交通事故コラム】訪日外国人観光客が被害者となったタクシー事故|言葉の壁による慰謝料増額と通訳費用の扱い
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京都の観光地で発生した、タクシーの後退による人身事故の裁判例(京都地方裁判所令和6年10月31日判決)を紹介します。
本件は、被害者が「日本語の通じない外国人観光客(65歳女性)」だったという特殊性から、異国での入院生活に伴う精神的苦痛(慰謝料)や、言葉の壁による通訳・通信費等の損害がどのように評価されるかが主な争点となりました。
事案の概要
京都市内の上り坂で、被告(タクシー)が乗客を降車させるために停車した際、ブレーキ等の措置が不十分だったため車両が後退しました。
降車しようとしていた原告(当時65歳の外国人旅行者)は、車体下に右足を巻き込まれ負傷しました。
原告は右足の骨折(脛腓骨骨幹部骨折等)を負い、京都市内の病院に約1ヶ月入院して手術を受けました。
その後、母国へ帰国しリハビリを継続しましたが、神経症状等の後遺障害(14級9号)が残りました。
主な争点と裁判所の判断
本件では、「外国人旅行者特有の事情」を損害額にどう反映させるかがポイントの一つになりました。
1. 異国での入院と言葉の壁による慰謝料増額
原告は、日本での入院には言語の壁があり、夫や付添看護の必要があったとして入通院付添費を求めました。
また、日本への旅行中に本件事故に遭遇し、楽しみにしていた旅行が台無しになったなど、通常の日常生活を送っている際の事故よりも精神的苦痛が大きかったと訴え、慰謝料の増額を求めました。
裁判所は、原告の傷病の内容から病院による看護を超える看護は必要でなかったとして入通院付添費は認めない一方、以下の事情を考慮して、通院期間の実績から算出される一般的な基準額を上回る慰謝料額を認定しました。
言語の壁: 日本語に不自由であり、意思疎通のために夫や友人の付添いを必要としたこと。
旅行の中断: 旅行中に事故に遭い、その後の予定変更を余儀なくされた精神的苦痛が大きいこと。
2. 通訳費用・翻訳費用の法的評価
原告は、日本の弁護士に依頼するために母国の知人(代理)を介したり、別途通訳を雇ったりした費用(約50万円相当)も損害として請求しました。
裁判所は、通訳費用や文書翻訳費用について、「本来は弁護士費用に含まれるべきもの」として、独立した損害項目としては認めませんでした
その一方、弁護士費用は通常は認容額の1割程度とされることが多いですが、本件では原告が日本語に通じておらず、弁護士とのやり取りに通訳を要するなど「通常よりも多額の費用を要した」ことを認め、認容額(約201万円)の約2割相当40万円(約2割相当)を弁護士費用として認定しました。
コメント
本判決は、被害者が外国人旅行者である場合の損害賠償実務において、重要な視点を提供しています。
既存の基準の中で考慮しづらい特殊事情について、精神的損害(慰謝料)や弁護士費用の柔軟な評価で考慮した点は、被害者救済の観点から妥当な判断と言えます。