【交通事故コラム】ワンペダル走行車の追突事故|ブレーキランプ不点灯と過失割合
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さいたま地方裁判所令和6年8月30日判決を紹介します。
本件は、アクセルペダルの操作のみで加減速を行うシステムを搭載した車両に対する追突事故において、先行車のブレーキランプが点灯していなかったことが過失として評価されるかが争点となりました。
事案の概要
本件事故は、埼玉県内の片側2車線の幹線道路で発生しました。
現場は交差点の手前で、信号待ちのために車列ができており、本件事故の先行車(追突された車両)も停止していました。
信号が青に変わり、隣の車線の車列が動き出したのに合わせ、先行車はわずかに前進し、その後停止しました。
その直後、後続車が発進し、停止した先行車に追突しました。
ここで問題となったのが、先行車両の特性です。
この車両はアクセルペダルから足を離すことで減速・停止するシステム(いわゆるワンペダル操作)を搭載していました。
運転者は停止時および停止中にブレーキペダルを踏んでおらず、その結果、ブレーキランプが点灯していない状態でした。
争点
一般的な追突事故では、追突した側に100%の過失が認められる傾向にあります。
しかし本件では、先行車がブレーキランプを点灯させずに停止行為を行ったことが、道路交通法上の注意義務違反にあたるか、またそれが事故発生に寄与したとして過失相殺の対象となるかが争われました。
第一審では後続車の一方的過失とされましたが、これを不服として後続車側が控訴しました。
裁判所の判断
裁判所は、後続車の前方不注視を事故の主たる原因と認めつつも、先行車の過失も一部認め、過失割合を「後続車90%:先行車10%」と判断しました。
まず、後続車については「前方で停止している被控訴人車(先行車)の動静を確認することなく控訴人車(後続車)を発進させ」た点に注意義務違反を認めました。
一方で、先行車の過失について、以下のとおり判断しています。
「被控訴人車(先行車)を停止させるに当たり、灯火等により合図をし、停止行為が終わるまで合図を継続しなければならない注意義務を負っていたにもかかわらず(道路交通法53条1項参照)、これを怠り、ブレーキランプを点灯させることなく被控訴人車(先行車)を停止させていたのであって、この点において、先行車運転者にも本件事故について注意義務違反があったと認められる。」
その上で、過失割合の判断理由について次のように述べました。
「停止した控訴人車(先行車)に追突した被控訴人(後続車)には著しい前方不注意があり、これが本件事故の主たる原因になったといえるが、先行車運転手が右側車線の車両の動きにつられるように僅かに前進し、停止する際に灯火等の合図をしていなかったことが控訴人車(後続車)による追突を誘発したことも否定できない」
結果として、先行車にも10%の過失があるとされました。
コメント
通常、信号待ちなどで停止している車両への追突事故は、追突された側には過失がない「0対100」の事案として扱われることがほとんどです。
しかし、本件では「ブレーキランプの不点灯」という要素が重視されました。
本判決は、ブレーキペダルを踏まなくても減速・停止できるいわゆるワンペダル登載車であっても、後続車に対して停止の合図(ブレーキランプの点灯)を送る注意義務があるとしています。
ワンペダル搭載車は、渋滞や発進・停止を繰り返すような状況下では、システム上ブレーキランプが消灯してしまう可能性があるため、運転者は意識的にブレーキペダルを踏むなどの措置が必要であるといえます。
なお、本事案の先行車の後続モデルの車種は、ワンペダルによる「完全停止機能」を廃止し、完全に停止するにはブレーキを踏む必要がある仕様にしたようです。
先行車としては「追突されたのだから自分は悪くない」と考えがちですが、停止時の状況や制動灯の有無によって過失相殺を主張されるリスクがあることを示す判決です。