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【交通事故コラム】中学生の行動変化と高次脳機能障害|自賠責認定等級に基づく逸失利益が算定された事例

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今回は、名古屋地方裁判所令和6年11月29日判決を紹介します。
歩行中の中学生(原告)が自動車と衝突して「高次脳機能障害」を負いましたが、被告(自動車)側が「学校生活に問題はなく労働能力は失われていない」と主張して争った事案です。

事案の概要
本件事故は、令和3年3月12日の午後2時10分頃、雨の降る名古屋市内の交差点で発生しました。
当時13歳の中学生だった原告は、停車していたトラックの後ろから走って道路を横断しようとしたところ、対向車線を直進してきた被告運転の貨物自動車と衝突しました。

原告は、外傷性くも膜下出血や脳挫傷などの重傷を負い、救急搬送されました。
3日間にわたる意識障害の後、容体は安定し退院しましたが、その後、感情のコントロールが難しくなったり、学校の課題が期限通りに出せなかったりといった、事故前には見られなかった症状が現れるようになり、交通事故の後遺障害としては9級10号が認定されました。

裁判所の判断
裁判で被告側は、「学校の成績も問題なく、交友関係も良好で性格変化もない」とする担任教師の報告書などを根拠に、後遺障害を否定しました。
しかし、裁判所は家族の証言や現在の生活実態を詳細に検討し、特に以下の具体的な症状を重視しました。

  • 家庭内での激しい感情の統制不全(壁を殴って穴をあける、ガラスを割るなど)。
  • 学校生活での集中力の低下や、課題提出の遅れといった計画性の欠如。
  • 他人が嫌がる発言をしてしまうなどの対人トラブル。

これらは高次脳機能障害に特徴的な症状であり、単なる「思春期による性格変化」とは一線を画するものと判断されました。
結果として、「神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限される」として後遺障害等級9級10号を認めた自賠責の判断に不合理な点があるとは言えないとされました

その上で、中学生である原告の将来の収入(基礎収入)について、令和3年の男子学歴計全年齢平均賃金(約546万円)をベースとし、9級の労働能力喪失率35%を認め、18歳から67歳までの逸失利益として約4,333万円(過失相殺前)を認定しました。

コメント
本判決の大きなポイントは、一見、学校生活を普通に送れているように見えても、高次脳機能障害が認められたという点にあります。

高次脳機能障害は、手足の麻痺のような目に見える障害とは異なり、家族以外の第三者には気づかれにくい特性があります。
本件でも、学校の担任は「明朗快活で問題ない」と報告していましたが、裁判所は「家庭内での暴言・暴力」や「学校での集中力欠如・対人トラブル」といった、一歩踏み込んだ日常生活の困難さを事実として拾い上げました。

被害者が子供の場合、「事故前後の性格や行動の変化」をいかに具体的に立証するかが鍵となります。

高次脳機能障害については、新しい法律である「高次脳機能障害者支援法」が令和8年4月1日に施行されます。
この新法については、以下の記事を書きましたので参照して下さい。

【福祉コラム】高次脳機能障害者支援法の成立│既存法制度の「谷間」の解消に向けて
https://note.com/yclo/n/nbced8a8d8db2

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