【交通事故コラム】歩道上の歩行者と進入自転車の接触事故|歩行者の「絶対的保護」と過失相殺
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自転車と歩行車の接触事故に関する裁判例(東京地方裁判所令和6年12月18日判決)を紹介します。
本件は、交差点を横断した自転車が歩道に進入する際、歩行者と接触した事故において、歩行者側にも過失があったかが争点となりました。
事案の概要
本件事故は、東京都内の交差点付近の歩道上で発生しました。
原告は、交差点付近の歩道を前を向いて歩いていました。
被告は、電動アシスト付き自転車で車道を走行し、交差点を横断して、原告が歩いている歩道へ進入しました。
そして被告の自転車と歩道を歩いていた原告が接触し、原告は右肩打撲、右肘打撲、脳震盪などの怪我を負いました。
裁判で、原告は、自転車が一時停止せずに漫然と歩道に進入したことが原因だと主張しました。
被告は、自転車のスピードはほとんど出ていなかった、原告が突然自転車にタックルするように衝突してきたので被告に過失はなく、原告の重過失または故意による事故だと主張しました。
裁判所の判断
裁判所は、証拠および当事者の証言に基づき、被告(自転車)の一方的な過失による事故と認定しました。
まず「原告が自らタックルしてきた」という被告の主張について、裁判所は、現場の見通しが良好であったことや、事故直後の負傷状況などを踏まえ、被告の主張を退けました。
その上で、本件の最も重要なポイントである過失相殺(歩行者の落ち度)について、以下のように判示し、原告の過失を一切認めず、過失割合を「原告0、被告100」としました。
『歩道を通行する歩行者は歩道の外から進入してくる自転車との関係でも絶対的に保護されると考えるのが相当であり、原則として過失相殺すべきではなく、本件で過失相殺をすべき特段の事情も認められない。』
自転車のスピードはほとんど出ていなかったという主張についても、裁判所は『仮に、被告自転車の速度が歩行者と同程度であったとしても、過失相殺すべき特段の事情とは認められない』として退けました。
コメント
裁判所は、歩道を通行する歩行者は歩道外から進入してくる自転車の関係で『絶対的に保護される』という、強い表現を用いました。
これは、東京地裁民事交通訴訟研究会が編集した「別冊判例タイムズ38号 民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準 全訂3版」を参考にしたものと思われます。
同書籍の【88】図では、本件と同様のケースについて、歩行車側の過失を0とし、修正要素(急な飛び出しなど、歩行車側の過失を増減する事情)も「全て考慮しない」とされています。
その上で、「歩道を通行する歩行車は歩道の外から進入してくる普通自転車との関係でも絶対的に保護されると考えるのが相当であり、原則として過失相殺をすべきではない。」と解説されています。
昨今、自転車の交通ルール遵守が社会問題となっていますが、自転車が車道から歩道に進入する際には、上記のように歩行者に対して極めて高い注意義務を負うとされています。
本判決は、たとえ自転車が徐行していたとしても、あるいは歩行者と同程度の速度であったとしても、歩道上で歩行者と接触すれば、原則として自転車側が100%の責任を負う可能性が高いことを確認したものと言えます。
また、自転車事故であっても、体に衝撃を受けた場合は、軽視せず適切な治療を受けるとともに、法的に正しい賠償を受けることが重要です。