【交通事故コラム】交通事故の過失割合、11年半ぶりに基準改訂 | 実務に与える影響(連載1/3)
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交通事故の損害賠償で過失割合(どちらにどれだけの責任があるか)を決める際、最も重視される書籍があります。
それが、「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」(東京地裁民事交通訴訟研究会編・判例タイムズ社)です。
本書は、東京地方裁判所民事第27部(交通部)の裁判官らが中心となって執筆されています。
本書に掲載された事故類型ごとの過失割合は、実際の裁判実務における判断基準となるだけでなく、損害保険会社が示談交渉を行う際の実務上の標準でもあります。
示談交渉の現場では「判タの図」と言えば何のことか分かる共通言語として機能しています。
したがって、被害者・加害者を問わず、適正な過失割合で解決を図るためには、本書の基準を手掛かりにして交渉を行うことが欠かせません。
この基準を知らずに示談交渉に臨むことは、いわば地図を持たずに目的地へ向かうようなものといえます。
約11年半ぶりの大改訂
この実務のバイブルともいえる書籍の改訂版が「別冊判例タイムズ39号 民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準〔全訂6版〕」として2026年3月末に発売されることが、出版社のホームページで発表されました。
前回の全訂5版(別冊判例タイムズ38号)が発売されたのが2014年7月ですから、今回の改訂は実に約11年半ぶりとなります。
この10年余りの間に、スマートフォンの普及、自転車運転のルールの厳格化、ドライブレコーダーの一般化、痛ましい事故の発生を受けた世論の高まりなど、様々な変化がありました。
改訂版では、このような変化も踏まえたアップデートがされているものと思われます。
別冊判例タイムズ39号の主な改訂ポイント
今回の改訂における最大の特徴は、これまで基準が明確でなかった類型の新設と、既存類型の細分化にあります。
38号と39号の目次を比較すると、以下の点が大きな変更点として浮かび上がります。
(1)「第6章 自転車同士の事故」の新設
これまで「歩行者対自転車」や「自転車対自動車」の基準はありましたが、自転車同士の事故については独立した章が設けられていませんでした。
今回の改訂で、交差点事故や進路変更に伴う事故など、56もの多岐にわたる類型が新設されました。
(2)「第8章 駐車場内の事故」の大幅な拡充
旧版では「第7章」として扱われていた駐車場事故ですが、「四輪車同士の事故」の類型が3種類から6種類へと倍増しました。
(3)その他の変更
四輪車同士の「発進車」に関する事故や、単車(バイク)と四輪車の「丁字路交差点」における事故などが新たに追加されています。
裁判官の講演録に見る改訂の背景
これらの改訂の背景には、実際の裁判例を踏まえて積み重ねられてきた議論が存在します。
特に今回大きな変更があった「自転車同士の事故」と「駐車場内の事故」については、「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準 下巻(講演録編)」(通称:赤い本下巻)に掲載された、東京地裁交通部の裁判官による講演の影響が強く窺えます。
- 赤い本下巻2024年版:伊藤智和裁判官「自転車同士の事故に関する過失相殺について」
- 赤い本下巻2025年版:倉鋪卓徳裁判官「駐車場内における事故の過失相殺(別冊判例タイムズ38号を踏まえて)」
これらの講演録は、39号の基準がどのような考え方に基づいて作られたのかを知るための重要な資料となります。
次回以降のコラムでは、これらの改訂点について、具体的にどのような基準が設けられたのか、より詳しく解説していきます。
(第2回へ続く)