【交通事故コラム】自転車事故の過失割合 | 「自転車同士の事故」に関する基準の新設(連載2/3)
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前回のコラムで触れたとおり、「別冊判例タイムズ39号 民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準〔全訂6版〕」の改訂における最大のトピックの一つが、「第6章 自転車同士の事故」の新設です 。
これまで、自転車と四輪車、あるいは自転車と歩行者の事故については基準が存在していましたが、自転車同士の事故については独立した章がなく、実務上の明確な「物差し」が不足していました。
そのため、示談交渉において過失割合の見解が対立しやすく、解決が長期化するケースも少なくありませんでした。
39号では、交差点における出会い頭の事故、右折・左折時の事故、進路変更に伴う事故など、計56類型もの図が新設され、自転車同士の事故についても統一的な解決基準が示されることとなりました 。
発売前のため、出版社のホームページに掲載された目次以上の情報はまだ得られませんが、前回のコラムでも紹介した「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準 下巻(講演録編)」(通称:赤い本下巻)に掲載された以下の講演が、今回の改訂に影響を与えていると考えられます。
- 赤い本下巻2024年版:伊藤智和裁判官「自転車同士の事故に関する過失相殺について」
そこで今回は、本講演を参考に、どのような改訂がなされたと考えられるかの見通しをお示しします。
「車両」としての責任とルールの適用
本講演は、38号では類型が設けられていなかった自転車同士の事故について、類型ごとの過失割合を提示し、その考え方を解説するものです。
本講演では、四輪車同士の事故の基準などを参考にしつつ、自転車の特徴や性質に応じて自転車同士の事故の標準的な過失割合を提示しています。
例えば、信号機のない同じ程度の幅で一時停止規制のない交差点の出会い頭事故の類型について、四輪車同士の事故の基準は左方車両が40、右方車両が60となっています。
これは、道路交通法の「左方優先」の原則が適用される結果、右方の車両の方が注意義務の程度が大きくなるからです。
他方、本講演で検討した自転車同士の事故の裁判例の中には、左方優先を特に考慮せず、双方50の過失割合としたものもありました。
本講演は、自転車も道路交通法上の「車両」であり左方優先の原則が及ぶとした上で、自転車は児童等も運転するので自転車の運転者が左方優先の規制を知らない場合もあること、自転車は四輪車よりも停止や回避の措置が容易であることなどを踏まえ、四輪車と同様にまでは左方優先は重視せず、左方車両45、右方車両55の過失がよいと思われると述べました。
かつては、自転車の交通ルール違反は往々にして見逃されがちでしたが、近年、自転車の飲酒運転の厳罰化、取り締まりの強化など、自転車であっても交通ルールを順守するように社会の意識が変わってきています。
交通事故の賠償においても、自転車も、四輪車と異なる性質があるとはいえ道路交通法の「車両」であることに変わりはなく、交通ルールを遵守していたかどうかが今後ますます問われるようになっていくでしょう。
自転車に特有の修正要素-ながら運転、ヘルメットなど
本講演で目を引くのが、自転車同士の事故の修正要素(過失の加算/減算事由)についてです。
本講演では、自転車に特有の修正要素として、「傘差し運転」「イヤホン・ヘッドホン使用」「並進」「二人乗り」「無灯火」などが検討され、著しい過失として過失割合を10%程度加算するとされています。
近年問題となっている「ながら運転(スマートフォン等の画面を注視)」については、重過失として過失割合を20%程度加算するとされました。
なお、近年の道路交通法改正の重要なトピックであるヘルメット着用努力義務化(令和5年4月1日~)について、本講演では、単車の基準で「著しい過失」に準じて過失相殺率が10%程度加算修正されている(ただし、ヘルメット着用義務違反が損害拡大に寄与している場合)ことを踏まえつつ、現時点では法改正が施行されたばかりで、ヘルメットを着用しなければならないという意識が十分広がっているとは言い難いことも考慮し、5%程度の加算とすることを提言しています
ヘルメット着用努力義務化から3年で発刊される39号で、この点がどのように扱われているかは気になるところです。
次回は、もう一つの大きな改訂点である「駐車場内の事故」について解説します。
(第3回へ続く)