【交通事故コラム】駐車場内事故の過失割合 | 駐車場事故の類型がより詳細に(連載3/3・完)
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今回のコラムシリーズの最終回では、2026年3月に刊行される「別冊判例タイムズ39号 民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準〔全訂6版〕」のうち、私たちの日常生活で頻繁に遭遇するおそれのある「駐車場内の事故」について解説します。
駐車場内では、空いている区画を探してキョロキョロと視線を動かしてしまい、どうしても前方への注意が散漫になりがちです。
その状況で事故が起きると、当事者は「突然ぶつかってこられた」という感覚に陥りやすく、「相手が悪いはずだ」と思いがちです。
当事者双方がそのような気持ちを抱くと、話し合いでの解決は難しくなってしまうため、お互いが議論の出発点にできる基準があることが望まれます。
38号では、駐車場内の四輪車同士の事故類型はわずか3種類しか掲載されていませんでした。
しかし、実際の事故相談では、「駐車スペースからバックで出ようとしたら、通路を走ってきた車とぶつかった」「お互いにバックで出ようとしてぶつかった」など、多様なパターンの事故が寄せられており、従来の基準だけでは対応しきれないケースが多々ありました。
今回改訂される39号では、こうした実情を踏まえ、駐車場内の四輪車同士の事故類型が、従来の3種類から6種類へと倍増しました。
この改訂についても、「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準 下巻(講演録編)」(通称:赤い本下巻)に掲載された以下の講演が影響を与えていると考えられます。
- 赤い本下巻2025年版:倉鋪卓徳裁判官「駐車場内における事故の過失相殺(別冊判例タイムズ38号を踏まえて)」
本講演を参考に、39号での改訂の方向性を探りたいと思います。
裁判官講演で提示された新しい類型
本講演では、以下のような新しい事故類型について、過失割合の考え方が示されました。
- 出庫車同士の事故(39号の【Ⅷ-3】に相当)
駐車区画から通路に出ようとする車同士が衝突する事故です。 - 入庫車同士の事故(39号の【Ⅷ-5】に相当)
同じ駐車区画や隣接する区画にお互いに入ろうとして衝突する事故です。 - 入庫車と出庫車の事故(39号の【Ⅷ-6】に相当)
駐車区画に入ろうとする車と、出ようとする車の事故です。バックで駐車区画に入ろうと切り返し動作をする入庫車と出庫車がぶつかるパターンが念頭に置かれています。
出庫車同士の事故、入庫車同士の事故は、それぞれの出庫、入庫に有意な時間差がないことを前提に、50対50を基本とするのが相当だと提言されています。
入庫車と出庫車の事故は、入庫車20、出庫車80の過失割合が提言されています。
どの車が駐車区画に入ろうとしているかよりも、どの車が駐車区画から出てくるかの予見の方が難しいことを考慮しているものと思われます。
まとめ:最新の「地図」を持って交渉を
全3回にわたり、約11年半ぶりに改訂された「別冊判例タイムズ39号」のポイントを解説してきました。
交通事故の示談交渉において、過失割合は賠償額を大きく左右する重要な要素です。
しかし、その判断基準となる「物差し」は、時代の変化に合わせて刻々と変わっています。
もし、インターネット上の古い情報や、改訂前の知識に基づいて交渉を進めてしまうと、本来受け取れるはずの賠償金を受け取れなかったり、不当に重い過失を背負わされたりするリスクがあると言えるでしょう。